2023(令和5)年は日本に密教を広めた弘法大師空海(774~835)の生誕1250年を迎えます。そこで、民俗展示室3「四国遍路」では、弘法大師空海の生涯を紹介した木版墨刷りの絵巻「高野大師行状図画(こうやだいしぎょうじょうずが)」(江戸時代以降制作。10巻本)の中から、空海の誕生の場面(巻第1「誕生奇特事」)を展示します。
平安時代初期の僧で真言宗の開祖となった空海は、774(宝亀5)年、讃岐国(現在の香川県)に誕生しました。真言宗の伝承では、空海の誕生日は6月15日といわれています。父は佐伯氏、母は阿刀(あと)氏の出身です。空海は幼少期に真魚(まお)といいました。
空海の誕生については、図画の詞書に、天竺(インド)から聖人が飛来して母の懐に入るのを夢に見て懐妊したこと、一般の人のように十月十日(とつきとおか)で生まれたのではなく、12ヶ月もたって空海が生まれた、と記されています。

絵巻には讃岐国の佐伯家屋敷と思われる寝殿造りの建物の中の寝所で、空海の父と母と見られる男女が添い寝しています。すぐそばにある衝立の後ろに、雲に乗った聖人が現れています。庭の厩(うまや)では、馬が床を蹴り上げて異変を感じているかのようです。まさに聖人が母の懐に入ろうとしている場面が描かれています。
こうした神秘的な話は聖徳太子の誕生伝説などにも共通します。
空海の生涯を総合的に描いた絵巻は鎌倉時代中期以降に登場します。鎌倉新仏教が隆盛する背景の中で各宗派において高僧伝が作られ、真言宗では「高野大師行状図画」「弘法大師行状絵詞」などが制作されました。また南北朝期には、空海生誕600年を記念して「弘法大師行状絵巻」が編纂されています。弘法大師信仰の広がりの中で、空海の事績や伝説を絵画化した巻子や掛軸、冊子類は数多く制作されました。
本資料は弘法大師空海の生涯が全91段の事績にまとめられ、絵入りで細かく紹介されています。制作年は不明ですが江戸時代以降の制作と見られます。大量制作が可能な木版による空海伝絵巻としても注目され、空海のさまざまな伝説が広まるきっかけとなったと考えられます。
展示室ではこの他にも、空海や四国霊場に関係する江戸~明治時代に刊行された資料や、愛媛県内外の主な空海伝説地の写真パネルなども紹介しています。
博物館にお越しの際には、常設展示室「四国遍路」もご覧ください。
















