Archive for the ‘館蔵資料紹介’ Category

中国四国名所旧跡図16 琴引八幡、有明浜

2012年2月4日

琴引八幡と有明浜を、東側の上空から俯瞰(ふかん)したような視点で西丈は描いている。あるいは象頭山から高性能の望遠レンズでのぞいて、琴引八幡と有明浜だけを切り取ったイメージであろうか。絵の中央下、木に囲まれた石垣の上に社が描かれているのが琴引八幡。海際の小高い山の上に立地していることがわかる。

『金毘羅名所図絵』にも大きな松に囲まれた石垣の上に、本社、高良社、大師堂などの建物が見える。明治時代の神仏分離以前までは、琴引八幡は四国遍路の第68番の札所でもあった。

琴引八幡の上部にはきれいな砂浜が広がっているが、この砂浜が「日本の渚百選」にも選ばれている有明浜。香川県観音寺市室本町、八幡町、有明町にかけての約2kmにも及ぶ瀬戸内海に面した砂浜で、『金毘羅名所図絵』にも「琴弾山の麓の濱をいふ、當国第一の絶景なり」と記されている。

嘉永3(1850)年にこの地を訪れた浄瑠璃太夫の竹本梶太夫(染太夫)も、「当山絶頂の御本社が琴引の八幡宮、則ち六十八番の霊場にして、風景のきれいなる事ほかにはあるまじき景地、裏へ廻り下向道、象ケ鼻といふ名所、下を見れば有明の浜とて絵にかく如くの風景なり」とその景観を絶賛している。西丈自身も琴引八幡と有明浜を織り込んで、「有明の月に琴引ぐ社哉」の句を絵の右端に書き込んでいる。

 画面左下には「三ガノ橋」の文字が記され、木製の橋が描かれている。これは染川に架かる三連続の橋のことで、橋詰めは観音寺の町並みで、商家工家が軒を連ねる繁華街であった。西丈もその部分だけ家が建て込んでいるように描いている。

当館では、企画展「四国へんろの旅-絵図・案内記と道標-」が2月21日~4月8日の会期で開催されます。多彩な資料で四国遍路の魅力を紹介します。ぜひご覧下さい。

お正月料理と昔の暖房道具

2011年12月21日

 

民俗展示室には実物大の復元家屋があり、季節に合わせて料理や、部屋の道具を替えています。

先日、寒い冬を暖かく過ごすための民具とお正月料理の食事を展示しました。

丹原地方の農家をモデルにした里のいえにずらりと並んだ暖房道具です。

あんかやこたつ、火鉢など用途に応じて様々な形をしています。

いずれも炭を燃やして熱源としていました。

後列の二つはやぐらごたつといって、上に布団をかけて使います。

同じ道具に見えますが、左側のこたつは熱源が炭ではなく電気で暖かくなります。

また、同じく里のいえにはずらりとお正月料理も並びました。

箱膳にのりきらないほどのご馳走です。

数の子や五目豆、紅白なますなどは現代のおせち料理でも見られます。

また、白いご飯を食べることができるのは、お正月などやお祭りなど特別な時だけでした。普段の食事は麦を混ぜたご飯です。

現代のお正月料理と比べてみても面白いかもしれません。

「お正月・めでた尽くし」と合わせて、ぜひお正月は家族皆でれきはくにいらして、目で暖かさとおめでたさを味わってください。

巨大な紙幟(かみのぼり)

2011年12月15日

お正月、1月2日(月)から開催されるテーマ展「お正月・めでた尽くし」展の設営・列品は着々と進んでおります。

14日には、巨大な紙幟が2点、登場しました。

展示室のフロア狭しと、広げられたこの紙幟。

明治時代初期に宇和島市内で端午の節句に掲げられていました。

この巨大な紙幟が空にはためいた様子を想像するだけで、気分が高揚してきます。

今回は博物館で展示ということで、間近でじっくり見ていただけますので、大きさももちろんですが、おおらかな絵柄も味わってください。

先日ご紹介した、大きな神社幕に負けないスケールとおめでたさを備えた巨大紙幟、もちろん絵柄もおめでたいものになっています。

どのような思いのこもった絵柄か、展示室で確かめてください。     

お正月、れきはくの企画展示室でお待ちしています。

竹に虎

2011年12月14日

 お正月、1月2日(月)から開催されるテーマ展「お正月・めでた尽くし」展の設営・列品がはじまりつつあります。

13日は、幅9メートル、高さが1.6メートルもある大きな神社幕を展示しました。

こちらの資料は、「竹に虎」という縁起の良い組合せが描かれています。

虎は、四神の一つ西を守護する「白虎(びゃっこ)」として古くから描かれてきました。中国では虎は竹林に住まうとされることから、吉祥の文様として愛されています。十二支の一つとしてもよく知られています。

またこの神社幕は、その大きさも見ものですが、寛政11(1799)年に製作されたもので、染織資料としても貴重なものだといえます。

まだまだ準備段階の「お正月・めでた尽くし」展ですが、おめでたいだけではなく、空間をダイナミックにつかった展示になりそうです。

寅年の方もそうでない方も、雄雄しい虎に会いに、お正月はれきはくにいらしてください。

もちろん来年の干支「龍(辰)」に関係する資料も展示されますよ!

民俗展示室で「ワタから糸をつくってみよう」

2011年11月15日

11月13日は、れきはくの開館17周年を記念して、様々なイベントが行われました。

なかでも人気だったのは、恒例の餅まき。大盛り上がりで、楽しい一時となりました。

開館記念日は、常設展も特別展も無料のため、いつもはエントランスホールで行う「ワタから糸をつくってみよう」も、民俗展示室の里の家で実施しました。古い民家で作業していると、一段と昔の暮らしが実感できそうです。

里の家の中で、綿繰り機を使って、綿の実からワタとタネを分けています。ハンドルをくるくるまわすと、ワタだけが通り抜けて、タネが手前に落ちていきます。みんな夢中になってハンドルをまわしていました。

里の家の外では、機織り体験が行われました。唐箕の向こうに2台の機織りが見えますが、この2台で小さな布を織っていきます。

上手に杼(ひ)を使って横糸を通して、筬(おさ)でトントンと横糸をしめて織っています。これを繰り返していくと、小さなコースターが織りあがります。機織りは大人気だったので、1時間延長してできるだけ多くの人に体験いただきました。

なお、次回の歴史文化体験「ワタから糸をつくってみよう」は、来年1月22日(日)の午後1時~3時です。たくさんのご参加をお待ちしてます。

テーマ展「伊予の暮らしとエコ―江戸時代のエコライフ―」開催のお知らせ

2011年9月30日

期間/平成23年年10月8日(土)~平成24年2月5日(日)

会場/文書展示室 

開館時間/午前9時~午後5時30分(展示室への入室は午後5時まで)

休館日/毎週月曜日(但し第1月曜日は開館、翌火曜日は休館。12月26日~平成24年1月1・4日休館。1月2・3日開館)

観覧料/常設展観覧料が必要です。

大人(高校生以上)500円(400円)/65歳以上250円(200円)/中学生以下無料

※     ( )内は20名以上の団体料金

内 容

 「もったいない」という私たちが何気なく使う言葉には、物を大切にする精神が宿っています。江戸時代では、山・海・川などの自然を管理・保護して資源を守りました。衣食住すべてにわたって、自然から作り出されたものは、幾度もリサイクルされた後に、作物を育てる肥料として自然に返されました。自然と調和・共存された江戸時代のエコライフは、まさに私たちが受け継ぐ先人の知恵の宝庫といえます。当館の収蔵資料を中心として、伊予における江戸時代のエコライフを紹介します。

構 成

1 わび・さびの世界    

2 江戸時代の環境保護

3 エコと教育 

4 城下町とエコ     

5 農村とエコ

6 江戸時代のリサイクル─和紙─

7 江戸時代の塩田

8 エコツアー

主な展示資料

1.西条誌(天保7(1836)年) 当館蔵

 西条藩朱子学者日野和(にこ)煦(てる)が、藩主の命により天保7(1836)年から7年の歳月をかけて編纂した地誌。西条藩領内をくまなく調査して、当時の産業や伝説、特産物、名跡などを写実的に描いた絵画を交えて紹介しています。 本資料は、西条藩の特産物の一つ、和紙作りの光景が描かれています。

2.道後温泉絵図 (江戸時代後期)当館蔵

 道後温泉を中心に道後の町並が描かれた彩色の絵図。道後温泉は平屋造りで、一の湯、二の湯、三の湯の他にも養生湯や馬湯が丁寧に描かれています。本陣として用いられた明王院をはじめとした旅籠などの建物が街道に沿って並び、周辺には湯神社、湯月八幡宮、宝厳寺などの寺社が詳細に描かれています。山にはすみずみまで手入れされていた様子が描かれています。道後周辺の田園が描かれ、江戸時代における里山と共存していた道後の町の様子が伺えます。

 

3.加藤文麗画「鳴子図」(横井也有賛「鳩吹に腹立たせたる鳴子かな」)(江戸時代中期)当館蔵

鳴子(なるこ)は、数本の竹筒を小板に並べてぶらさげたもので、田畑の害獣や害鳥を追い払う道具です。鳩吹(はとぶき)は、猟師が両手の手のひらを合わせて山鳩の鳴いているような音を出して猟仲間に知らせる合図です。加藤文麗は、秋の風物詩である鳴子と山里の風景を水墨画に描き、横井也有は、二つの音が山里に響き渡る様子を俳諧に詠みました。文麗は、大洲藩三代藩主加藤泰恒の六男で、狩野周信(ちかのぶ)門に入って絵を学びました。徳川吉宗の隠居後に仕える傍(かたわ)ら、谷文晁など日本を代表する画家を育てました。也有は、尾張藩士で、俳句、俳文、絵画、和歌、など各分野で活躍しました。

明治・大正時代の納経帳

2011年9月16日

民俗展示室3「四国遍路」は、9月7日に一部資料の展示替えを行いました。

今回新たに収蔵品となった、明治~昭和初期にかけてのお遍路さんの所持品を展示しました。これは伊予国東宇和郡多田村(現、西予市宇和町)出身の遍路が、実際に四国巡礼を行った際に所持したもので、納経帳、念珠、札挟み、参拝記念のお土産などからなります。その中から納経帳を紹介します。

1 明治時代の納経帳  

この納経帳は明治38(1905)年のもの。地元の43番明石寺をスタートして42番仏木寺へ進み、その後、逆打ちで巡礼しています。44番大宝寺で結願。ほとんどの札所では、納経印が3つ押印されており、同じ納経帳を使用して3回巡礼したことがわかります。納経印があるのは全100箇所を数えます。88箇所の通常の札所以外に途中、篠山神社、13番奥院の建治寺、柳水庵、箸蔵寺、65番仙龍寺、60番前札の清楽寺、86番奥院の地蔵寺、生木山正善寺、延命寺、5番奥院五百羅漢などの、番外霊場や奥院に参詣していることがわかります。

2 大正時代の納経帳

表紙に「奉納経」とあります。扉に高野山普賢院の弘法大師像が印刷されています。1番霊山寺から順打ちで廻り、88番大窪寺で結願しています。ほとんどの札所では、納経印が5つ押印されており、この納経帳を使用して5回巡礼したことがわかります。また、番外霊場月山神社の納経の墨書から、納経帳は大正10(1921)年頃のものと考えられます。

納経帳は四国遍路に必須の携行品です。納経帳を調査することによって、四国遍路を行った人物、年代、参詣先、巡礼ルートなど、多くの情報がわかり、四国遍路の歴史を探る上でとても貴重な資料といえます。

 

アイロンの移り変わり

2011年9月9日

  民俗展示室2「愛媛のくらし」では8月25日に展示替えを行いました。

 展示ケースでは「アイロン」の移り変わりがわかる資料が並んでいます。

 「里のいえ」近くの展示ケースで見ることが出来るのが「鏝(こて)」と「火のし」です。

 手前の鏝は、三角の形の部分を、火鉢などの中に入れて、直接熱くして使います。温度の調節が難しいのですが、裁縫の時に、布のしわをとったり、カタをつけるのに役に立ちました。

 奥の火のしは、丸い穴の中に炭を入れて、底を熱くして使いました。底が平らになっていて、布の上に置き、熱と重みで衣類のしわをとります。

 

 次に登場するのが「炭火アイロン」です。

 炭火用アイロンは、中にいれる炭火の量で温度を調節することができます。また、下に並んだ小さな穴から空気が入り、煙突からガスがぬけるため、長い間使うことができるようになりました。

 このように上ぶたを開けて、中に炭を入れて使います。

 

 

 ずっしりと重い炭火アイロン、内部はこのようになっています。

 道具の形が変わっても、しわを取るには熱と重さが大切であることがわかるアイロンの移り変わりです。

 民俗展示室2でご覧になることができます。ご来館お待ちしております。

洗濯の移り変わり

2011年9月8日

 民俗展示室2「愛媛のくらし」の部屋の展示資料が、秋を意識したものに変わりましたのでお知らせします。

 去る8月25日、3名の当館ボランティアさんにもご協力いただいて、夏の食事模型や蚊帳を撤去し、秋の食事模型などへ展示替えを行いました。

 また今回は、「洗濯」と「アイロン」の移り変わりを展示ケースで紹介しています。

 展示ケースにどのように置けば、資料の用途や面白さが伝わるか、4人で額を突き合わせての作業です。

 まずは水色のドラム缶のような道具、「かもめ印マジック洗濯器」といいます。

 この道具をどのように使って洗濯したのでしょうか?

 マジック洗濯器上部の蓋を開けると、内部はこのようになっています。

 

 この中に洗濯物とお湯を入れて、蓋をし、両手で持って振り、汚れを取りました。

 使用方法を説明した書類はないのですが、洗濯器の底の部分には「湯温40度~60度 撹拌10秒~20秒」とあります。

 お湯を使うことで内部の圧力が高くなり、洗剤が洗濯物の繊維に入り込み、汚れが取れるようです。

 

 ボランティアさんたちが

 「見たことないですね」

とおっしゃっていたように、広く普及したというわけではありませんが、それでもモダンな姿の「マジック洗濯器」が登場した時は驚きを持って迎えられたと思われます。

 不思議でモダンな「マジック洗濯器」は、民俗展示室2で見ることができます。ご来館お待ちしております。

 また、これはお馴染み「洗濯板とたらい」も民俗展示室2「海のいえ」に展示しております。あわせてご覧ください。

電車が動きました

2011年8月8日

特別展「昭和子ども図鑑」では、展示室の最後に昭和30年代の男の子の部屋があります。男の子の本棚には、当時人気があった子ども雑誌や付録のマンガがたくさん並んでいます。畳にはボーリングゲームがあったり、昭和33(1958)年から東京と大阪を6時間50分で結んだ特急「こだま」のブリキのおもちゃも見えます。男の子はきっと鉄道が大好きなのでしょう。鉄道に乗って、旅行にもよく連れていってもらっているのか、机のまわりには観光地のペナントがはられ、本棚には観光地で売られていた人形なども並んでいます。机には「夏休みの学習」が出されていますが、遊ぶのが楽しくてなかなか手がつきそうもありません。展示の担当者は、そんなイメージでこの子ども部屋をつくりあげました。

子ども部屋の中央には、丸くレールをつなぎその上に機関車が置かれた三線式のOゲージが展示されていますが、先日その機関車が突如動き出しました。そうなんです。このOゲージ、実はコンセントにつなぐとまだ動く現役のおもちゃなんです。まず最初に三線の真ん中のレールに電気を流して走らせていることや、機関車の前後のランプが電流を受け光り、走らせるレールから火花が飛ぶことなど説明して職員が動かしてみます。その次に、その日展示を見ていた子どもたちが実際にOゲージの動かしてみました。自分で電車が動かしているという感覚があるところがおもしろそうです。

Oゲージは昭和30年代のおもちゃなので、毎日長時間走らすことはできません。コンディションを見ながら、会期中不定期で動かす予定です。その際には火花を散らして走るリアルなおもちゃをお楽しみください。