5月26日(月)、松山市立子規記念博物館において、「伊予かすり 機の音プロジェクト実行委員会」主催による「日本三大絣 伊予かすり 機の音サミット~鍵谷カナ没後160周年記念」が行われました。
久留米絣、備後絣とともに日本三大絣の1つに数えられた伊予絣は現在の製造業者は1社、職人も数名で伊予絣の伝統を守り続けています。そうしたなか、本年2月に伊予絣は愛媛県無形文化財(工芸技術)に指定され、技術保持者として白方宣年氏と村上君子氏の2名が認定されました。
このイベントは、伊予絣の創始者鍵谷カナ没後160周年を記念して、愛媛が誇る伝統工芸品・伝統技術である伊予絣の魅力を見つめ直すとともに、伊予絣を次世代に繋いでいくための方法を考えるためのものです。
最初に実行委員会の白方基進氏による開催宣言が行われ、基調講演Ⅰでは、当館専門学芸員・今村賢司が「温故知新の伊予かすり―未来へつなぐために―」と題して、伊予絣の歴史を振り返り、その特色や魅力、今後の展望・未来像について紹介しました(写真①)。

活動発表では、伊予絣を用いて作品づくりをしている伊予農業高等学校生活科学科被服班の高校生6名による報告「伊予かすりで日常生活に彩りを~サスティナブルな伝統工芸の普及を目指して」がありました。高校生による持続可能な伊予絣を考える研究活動は、伝統工芸と距離のある現代において、実際に日常生活の中に伊予絣を採りこむ事例として意義深く、伊予絣の魅力を身近に感じるアイデアとしてとても参考になりました。
伊予絣の基調講演Ⅱでは鹿児島県奄美大島の大島紬の伝統工芸士・元允謙氏が大島紬を事例に、進化していく伝統工芸という考え方や異業種、他分野とのコラボ事例、商品開発のノウハウなどが紹介され、今後の伊予絣の継承や活用にあたり多くの示唆をいただきました。
パネルトークでは、愛媛大学地域協働推進機構特定准教授・大本敬久氏、あいテレビアナウンサー・滝香織氏の司会によって進行。パネリストは伊予絣作家・川西利美氏、垣生公民館長・中田浩一氏、元允謙氏、今村の4名で、伊予絣を継承するには?今後活用するには?について意見交換が行われました。
サミットの会場では、高機による伊予絣の制作実演(写真②)や、白方興業株式会社所蔵の伊予絣の古布「白方コレクション」の絵絣、垣生公民館所蔵の垣生で製造された伊予絣の生地・着物などが展示され、参加者が身近に伊予絣の魅力を感じることができました(写真③)。


今回は第1回目のサミットでしたが、伊予絣関係者、染織作家、大学、博物館等の研究者、経済界、地元の高校生、大学生、行政など様々な立場の方が参加され、伊予絣の魅力について再確認して、今後の在り方についてともに考えることができ、伊予絣の新時代の一歩となるとても有意義なサミットでした。