9月11日(木)、八幡浜市立双岩小学校の5・6年生(12名)に平和学習の出前授業を行いました。今回はテーマ展「戦後80年 戦時下のくらし」を見ていただいた先生から、6年生が修学旅行で広島を訪れるため、その事前学習としてご依頼をいただきました。当日、双岩小学校に行ってみると、「二宮金次郎」の銅像が目に入ってきました。興奮気味に台座を見ると、「紀元二千六百年」に建てられたことがわかりました。〝これは使える!〟と思いながら教室に入り、児童の皆さんから大きな声で気持ちの良い挨拶を受けて授業がスタートしました。
先生との事前の打ち合わせで、戦争の経緯、戦時下の苦しい生活、愛媛の空襲と原爆の関係、身近に残る戦争遺跡についてご要望があったため、その点に重点をおいたスライドと実物資料を用意しました。米穀の配給制度に関しては、愛媛県の平均配給量(1日約240g)を持参し、全国平均(1日約350g)よりも下回っていたこと、現在の給食と比較して栄養不足だったことを伝えました。衣料の切符制度に関しては、昭和19年の衣料切符(30歳未満50点)を例に、上着(15点)、ズボン・スカート(各7点)、靴下(3点)を買ってみる体験を行いました。
また、金属の回収によって銅像、お寺の鐘、家庭の鍋などがなくなり、代用品が出回ったことを伝え、持参した陶器製のおろしやボタン、紙製の洗面器などに触れてもらいました。そして、戦前の学校に多く建てられた「二宮金次郎」の銅像も多くが回収されたため、双岩小学校に残る「紀元二千六百年」に建てられた銅像は、回収を逃れた貴重な資料である可能性を伝えました(後日調べてみると、現在のものは昭和42年に再建されたものとわかったため、一度回収されたものと思われます)。児童の皆さんからは「紀元二千六百年」だと「未来から来てるじゃん!」と驚きの声も。今回は日本独特の考えによる年号で、昭和15年に当たることだけ伝えましたが、毎日生活している学校内にも歴史をモノ語る資料が存在していることに気づいてもらえたのではないかと感じました。
続いて、八幡浜市に県下で初めて爆弾が投下されて以降、松山・今治・宇和島では焼夷弾による大規模な空襲で多くの死者や被害がでたことを写真パネルで説明しました。持参した焼夷弾の殻を持ってもらい、重さ、形、臭いなど五感を通して空襲を想像してもらいました。次に、長崎型の模擬原爆である「パンプキン」が、新居浜・西条・宇和島に合計4発投下されたことを紹介しました。特に宇和島への投下は長崎の前日である8月8日だったことを伝えました。
また、戦争末期には宇和盆地に陸軍の飛行場が作られ、戦後の航空写真からも水田の区画からそれが分かることを示しながら、身近なところに軍事施設があったこと、現在も残っている場合があることを伝えました。児童の中には太平洋戦争前に作られた「八幡浜第一防空壕」を知っている児童もいて、今後の調べ学習につながればと思いました。最後に防空頭巾やモンペなどの着付け体験を行い、物資不足の中でこれらにも様々な形態のものがあることを紹介しました。
今回の出前授業が戦争の悲惨さと平和の大切さを考える機会となり、戦争体験者と同じ時間を過ごす最後の世代として、戦争体験者から直接当時のことを聞き取り、次世代につなげる役割を担ってもらえれば幸いです。6年生の皆さん、修学旅行では大いに学びを深めてください!当館ではご要望に応じた出前授業(平和学習)を行っています。ぜひお気軽にお問い合わせください。




