今回は四国遍路の巡拝用品店について紹介します。
昭和37年(1962)、四国霊場会後援による四国遍路のガイドブック『四国八十八ケ所霊場 巡拝案内 遍路の杖』が刊行されました。編著者は明王寺(徳島県名西郡神山町下分東寺)住職・荒木戒空、発行所は浅野総本店(徳島県阿波郡市場町切幡寺観音一七三)です。荒木は本書の刊行に当たって「霊場各寺院より貴重な資料を提供して頂き、特に霊場会各支部長諸講師には多大の御援助を頂きましたことを大謝いたします」と記しています。四国霊場会の本部は善通寺(香川県善通寺市)に置かれていました。
巡拝用品店の浅野総本店は、本ブログ29・30で紹介した四国霊場第10番切幡寺参道で四国遍路道中図を発行しています。四国遍路の案内地図のみならず案内本も手掛けていることがわかります。
本書は四国霊場会後援の「参拝者必携」をうたった四国遍路ガイドブックとして売れ行きが好調だったと推察され、同39年には第三版(当館蔵)が増刷されています。そこには四国霊場巡拝のバスやタクシー、巡拝用品店などの広告が掲載されています。それらの記事から、団体バスやタクシーを利用して巡拝することが普及している当時の四国遍路の状況や、遍路の巡拝用品の種類などをうかがい知ることができます。
以下、第三版に掲載する巡拝用品店の広告を見てみましょう。
【浅野仏具店】 ※文字による広告
「霊場巡拝用品 納経(掛軸と帳)、金剛杖、納札札箱、念珠、笠〈天台笠、尼笠、菅笠〉、鈴、手甲脚絆、白衣、サンヤ袋、負台、経本、納経行李、荷行李、雨具、ベン行李、白地下足袋、シリスケ、袈裟、風呂敷、地図案内書、其の他、製造卸小売り 徳島県大麻町坂東 四国第一番札所前 浅野仏具店(後略)」
【浅野総本店】 ※文字、地図、写真入りの広告
「神仏山水花鳥外掛軸、経本、御守護、美術印刷・表具調進、念珠、金仏、仏具、各寺院神社御用達 スモトリ屋 徳島県市場町切幡 浅野総本店(後略)」
これらの広告は、四国遍路の巡拝を開始する遍路が最も多い徳島の四国八十八箇所霊場第1番札所霊山寺前の浅野仏具店と、弘法大師と機織り娘の伝説で有名な第10番切幡寺参道にある浅野総本店のものです。
浅野総本店は本書の発行者であるため、自社の宣伝広告を大きく掲載したものと見られます。霊山寺前の浅野仏具店は、昭和12年(1937)に浅野伊勢吉(徳島県阿波郡八幡町切幡)が発行した四国遍路道中図に「四国第一番門前 浅野支店」(浅野支店版、写真①)、発行年不明のものに「四国第一番札所前 浅野商店」(浅野商店版、写真②)とあることから、浅野総本店の支店的存在であったと考えられます。


両店とも巡拝用品を取り扱っていますが、本業は仏具や表具などを専門としています。浅野仏具店の広告によると、遍路が被る笠にも天台笠、尼笠、菅笠などの種類があったこと、今日ではほとんど使用することはなくなった手甲、脚絆、負台(遍路が荷物を背負うときに用いる台)、各種行李(納経、荷物用、弁当用)、シリスケ(道中で座る際に着物が汚れないために着用)など、徒歩遍路の必需品として古くから利用されてきた巡拝用品が昭和39年頃にも販売され、製造・卸売・小売業に携わるなど手広く経営を行っていたことがわかります。
浅野総本店の広告によると、「神仏山水花鳥外」「各寺院神社御用達」とあるように、様々な種類の掛軸を取り揃え、巡拝記念の土産品なども充実していたと推察されます。無料駐車場の場所が地図上に記載され、早くから自動車遍路の利用に対応していることもわかります。
四国霊場を巡拝する遍路にとって巡拝用品店は、四国遍路の最新の情報収集、スムーズな遍路支度や巡拝記念の土産品を入手するなどに必要不可欠な存在であり、遍路と四国霊場巡拝をつなげる重要な役目として機能してきました。巡拝用品店の中でも老舗である浅野総本店の初代店主・浅野伊勢吉は「四国遍路道中図」を発行し、ガイドブック『四国八十八ケ所霊場 巡拝案内 遍路の杖』を手掛けるなど、四国霊場巡拝を総合的にサポートする担い手として、四国遍路文化の発展に貢献してきたことがわかります。今後、巡拝用品店から見た四国遍路の動向や、その創業者の四国遍路との関わりや弘法大師信仰などについても探ることができればと思います。


















































