2007 年 8 月 9 日 のアーカイブ

開催中!「異界・妖怪大博覧会」12―エンコ祭り―

8月 9日 木曜日


※穴井のエンコ祭り(祠におにぎりが供えられている。)

 八幡浜市穴井では毎年旧暦4月5日に「エンコ祭り」が行われます。エンコとは海に棲(す)んでいる架空の動物で、海に入る者の足を引っ張ると地元ではいわれ、中国、四国地方では河童のことをエンコと呼ぶ事例が多く、この祭りは河童祭りの一種とでも言うべきものです。地元では「水天宮祭り」とも呼んでいますが、海岸に出ることが多くなる夏の始めに、その年に水難事故が起こらないよう祈願する行事です。

 昔ながらの言い伝えでは、旧暦4月5日に、穴井に住む母親と子供が弁当を持って「灘の浜」に出かけていき、初めに、にぎり飯三個を波打ち際の石の上に供え、「エンコ様、おにぎりをお供えしますけん、どうか水難をのがれさせて下さい」と拝んでから弁当を開きます。中には、お供え物を紙に包んで海中に投げ入れる者もいたり、近くの竜王様の祠に供える者もいます。

 夕方近くになると、磯辺に酒肴持参で地区の人々が集まり、飲んだり食べたり唄ったりしますが、昭和40年代以降は地元の男性も加わるようになっています。かつては三味線に合わせて、飲む程、酔う程に歌や踊りが出ていたともいいます。

 また、今では行うことも少なくなったといいますが、海岸に出る際には、各家でエンコの嫌がるという筍(たけのこ)を食べ、腰に鹿の角をつっていました。エンコが鹿の角を嫌うという伝承は、南予地方各地でも聞くことのできるもので、一度つかまったエンコ、河童といった水に棲む動物が、命乞いの条件として毎朝、人間に魚のお礼をすることになるも、魚をかける鉤(かぎ)を鹿の角に代えたとたんにエンコの恩返しも終わってしまう、という話が一般的です。

 柳田国男「山島民譚集」(『定本柳田国男集』27巻所収、筑摩書房)によると、高知県長岡郡下田では、河童が馬を川に引き込もうとしたので、毎年6月15日には家々の馬を川端に連れていき河童祭りを行うといいます。八幡浜地方では、エンコが馬ではなく人間を海に引き込もうとする話を各地で聞くことができますが、穴井のエンコ祭りは、もともとは母子が祭りの主体であったことから、子供が水難に遭遇しないことを第一義に祈願して行われるものといえるものです。

※企画展「異界・妖怪大博覧会」では、河童の展示コーナーには、この八幡浜市のエンコ祭り以外にも愛媛県内に残る河童伝説を写真パネル等で紹介しています。