酒飯論絵巻(当館蔵)
みなさんは、お酒を飲んで騒ぐ派ですか?それとも静かにたしなむ派ですか?
中世にもお酒を飲んで騒いでいる人々をみることができます。酒飯論絵巻<しゅはんろんえまき>という16世紀に成立したとされる絵巻を紹介します。これは初期の風俗画として注目されています。
絵巻の内容は、酒好き(上戸<じょうこ>)と飯好き(下戸<げこ>)がそれぞれ、酒と飯の長所を上げて言い争い、酒と飯の両方好きな中戸<ちゅうこ>が酒も飯もほどほどがよいと説くという物語で、それぞれ念仏宗と法華宗、天台宗の宗教対立を暗示しているとされています。
まず酒好きの上戸の場面をみてみましょう。
畳敷きの広間で酒宴の様子が描かれています。中央には、鼓の音にあわせて上半身を脱いで楽しそうに踊る人々が見られます。表情からすると、かなりお酒が入っているのでしょうか?
白木の折敷や三方の上には酒盃がみられます。酒盃はこの絵巻では漆塗りのように描かれていますが、16世紀の文化庁所蔵絵巻では土器が描かれていることから、本来は土器である可能性があります。土器は一度使用すれば廃棄され、清浄を意図する場面で多用されました。中世の城館遺跡から、一括廃棄された大量の土器の皿や杯が見つかっています。
床の間には畳を敷き、花台にのった中国陶磁器らしい花瓶が置かれています。龍泉窯の青磁花瓶でしょうか?背後には掛け軸が掛けられています。もたれかかり、目を閉じている人は飲みすぎたのでしょうか?次の間では、酒が入った樽がたくさん積まれている様子が描かれています。酒がどんどん提子に入れられ、振舞われています。鼓の音や手拍子、たのしそうな笑い声がひろがる宴会風景が目にうかぶようです。
かなりお酒が入ってしまって酔いつぶれている人もいます。飲みすぎには注意しましょう。