2013 年 6 月 のアーカイブ

西予市三瓶の野鍛冶資料

6月 28日 金曜日

先日、れきはくボランティア・スタッフの方とともに、館蔵資料の西予市三瓶の野鍛冶資料の整理を行いました。

野鍛冶とは、農具、漁具、包丁などの地域生活に密接な鉄製道具を手がける鍛冶屋のことをいいます。かつて「村の鍛冶屋」として、地域生活を支えていた野鍛冶でしたが、農耕具の機械化、大手メーカーによる大量生産時代の到来によって、鍬(くわ)、鋤(すき)などの農具の生産・修理の需要が急減し、全国的に各地の野鍛冶は相次いで廃業していきました。

今回、整理した西予市三瓶の野鍛冶資料は、旧三瓶町朝立で平成10年頃まで操業されていた石本鍛造で作られた、愛媛県内外の鍬先の雛形(見本)です。

愛媛県内外の鍬先の雛形

石本鍛造の創業は明治期とされ、昔は大八車や馬車の車輪(鉄輪)を専門に作る車鍛冶でした。戦後、車の修理や新造の注文が減ったため、鍬、鋤などの農具を手がける野鍛冶に転身。昭和42年頃、甘藷、麦の栽培が主であった畑作が蜜柑栽培へと移行するにつれ、鍬の新調や修理の仕事が減り、昭和45年頃から、今治の金物問屋の依頼で、愛媛県内外の鍬先を専門に作りました。

鍬先とは、鍬の頭部に取り付ける鉄製の部分のことです。鍬先は地域によって形や呼称が千差万別です。それは土壌、作物の品種、使用者などの違いから、様々な種類の鍬先が作られました。形態を大別すると、三つ鍬、四つ鍬などの鍬先が又状に分かれている「又もの」と、鍬先が平べったい「平もの」があります。

今回、整理した資料は、実際に各地の鍬先を製作する際の見本(雛形)として作られ、大切に保管されてきたものです。

愛媛県内で使用されていたものとして、地元(三瓶)窓鍬、温泉郡四ツ鍬、周桑郡三ツ鍬、周桑平鍬、周桑ビワ鍬、周桑トギリ鍬、越智ごぼう掘り、越智型窓付き草削り、南予型おたふく鍬、柿木皮はぎ、玉ねぎ植がんぎ切り、八本レーキ、ナタ鍬などがありました。さらに、県外の鍬先には、香川県高松三ツ鍬、徳島県鳴門四ツ鍬、島根県平鍬、島根型化肩上げ四ツ鍬、広島島型三ツ鍬、広島ホソ口虫掘り、山口県山口型三ツ鍬、新潟県ヒツ大三ツ鍬などがありました。県内のみならず、四国地方や中国地方、遠い新潟県の鍬先までもが、かつて西予市三瓶町で作られていた事実には驚愕します。

越智型窓付き草削り(左)と南予型おたふく鍬(右)

新潟県ヒツ大三ツ鍬

実際、資料整理にあたっては、鍬先の使用痕跡や現状を損なわないように注意しながら、鍬先の表面についた埃や錆を布やブラシで軽く払い落とし、クリーニングが終わったものから、資料名称を記した整理用のラベルを括り付けました。鍬先の中には、商品銘や鍛造所名が刻まれているものもありました。

クリーニング作業

クリーニング、ラベリングが終わった資料

整理にあたった参加者はみんな、鍬先の種類の多さ、形状や呼称の違いに驚き、その意味や使い方などについていろいろ想像しながら、楽しく作業を終えました。西予市三瓶町の石本鍛造で作られた鍬先の製作見本(雛形)は、なくなりつつある野鍛冶資料として、また、農具研究資料としても貴重といえます。