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中国四国名所旧跡図34 阿州鶴ノ奧之院灌頂寺(慈眼寺)

2017年10月5日

灌頂ヶ滝を谷越しに見ることができる場所には、不動堂があった。西丈が描く絵にも、前の道沿いに小さな建物が描かれているので、これが不動堂であろう。46番浄瑠璃寺から遍路に出た英仙本明の「海南四州紀行」には、灌頂ケ滝の箇所に「此方ニ堂アリ、茅屋疏ナリ、一間半ニ二間不動木像坐ス」と記している。そこから少し登って橋を渡り、くねくね曲がる道を一丁ごとに設けられた丁石を辿るように800メートルほど登って行くと、20番鶴林寺の奧の院、慈眼寺に到着する。西丈は慈眼寺のことを、灌頂ケ滝に因んで灌頂寺と記している。

石灰岩質の奇怪な岩を背景に、曲り家の草屋が2棟。文化元(1804)年の「海南四州紀行」は、「寺鍵作、茅屋麗ナリ」と記すが、鍵作とは曲り家のことをいうので、西丈の絵と一致する。そのうちの左側の1棟に向かい、袈裟を着た僧侶と随者が歩いている。草屋には、山から樋を伝って水を引いていた様子も描かれている。おそらく左側が本堂と思われるが、そこには本尊の大師作とされる十一面観音、不動尊が安置されていた。人里離れた山中のためか、松浦武四郎の「四国遍路道中雑誌」には、「行暮候節は止宿をゆるす」と記されている。