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「高虎と嘉明」紀行17 -上野公園-

2017年11月19日

 東京・上野公園の広い園内には、パンダで有名な動物園をはじめ、博物館施設、神社・仏閣など多くの施設が建ち並びます。
 実は、この公園内、もっと言えば上野動物園内に、高虎をはじめとする藤堂家の墓所が、動物園の賑わいとは別世界のようにひっそり残されています。
 不思議ですね、なぜでしょう。

 東京国立博物館の裏手には、寛永寺の子院の一つとして藤堂家の菩提寺寒松院があり、実はこれに由来します。上野動物園の敷地には、かつて寒松院があったのです。
 この動物園敷地に隣接して、現在も徳川家康を祀る上野東照宮が鎮座しますが、東照宮造営と同時に別当寺として創建されたのが寒松院です。

 徳川家にゆかりの深い寛永寺や東照宮と寒松院が密接な関係にあるのは、高虎に由来します。
 実は、上野公園がある場所の一画に、かつて藤堂家の下屋敷がありました。寛永2(1625)年に江戸の鬼門の抑えとして寛永寺を建立する際、屋敷を持っていた高虎たち大名は敷地を献上、現東京国立博物館所在地に本坊、博物館施設が建ち並ぶ中央の広場に根本中堂を構えるなど、現在の上野公園一帯をほぼ敷地としていたといいます。

寛永寺

 2年後の同4(1627)年には、藤堂家下屋敷のあった場所に東照宮が建立され、同時に寒松院も建てられました。

上野東照宮

 しかし、約240年後の幕末慶応4(1868)年、彰義隊で知られる上野戦争で多くの建物を焼失します。敷地は公園化され、寒松院も離れた場所に移転、さらに太平洋戦争の戦禍に遭って再度移転。その結果、墓地だけが現在の場所に取り残された状態になっているのです。

 今では多くの人々で賑わう上野公園、実は高虎とゆかりの深い場所だったのです。

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