民俗展示室2をゆうゆうと泳ぐこいのぼりは、八幡浜市にある若松旗店が製作したものです。先日、若松旗店のご主人、奥様、娘さんがこいのぼりを見に博物館に来られました。現在でも、お節句の幟は染めていますが、こいのぼりは手がけていないそうです。
「話には聞いていたけど、はじめてお目にかかるなあ。」
ご主人である若松智さんの言葉です。展示室のこいのぼりは昭和25年ごろのもので、昭和22年生まれの智さんは、感慨深そうに、染めや筆のタッチ、染料などを確認されていました。
例えば、同じように見えるうろこの模様も、おなかあたりの模様は大きく、尻尾のあたりは小さく描かれています。これはこいのぼりにボリュームを出して、立体的に表現するための工夫です。
染屋さんに限りませんが、手塩にかけた幟や、大漁旗などの品物は、お客さんの手に渡ると、二度とお目にかかれないのが普通です。そこで若松旗店さんでは近年、製作過程や完成品を写真に記録して、保存に努めておられます。
「戦後の物がない時期なのに・・・親父に色々聞いておけばよかったなあ」
という若松さんの言葉が印象的でした。
けれど、染めの技術や心意気は、こいのぼりなどの作品と若松さんご自身に脈々と受け継がれていると思います。
時空を泳ぐこいのぼりは六月末まで、民俗展示室2で見ることができます。