村上節太郎写真13 小網のヒヤマ 昭和12年

5月 19日 土曜日

村上節太郎写真3-226
 村上節太郎は、古くから小網(伊予市双海町上灘)の共同経営によるイワシの巾着網に興味をもっていた。その証拠に村上は昭和12年、14年、26年と少なくとも三回にわたり小網を訪れ、何枚もの写真にその姿を記録していった。強い西風と波から船を守る茅葺きの船小屋。イワシの群れが湾内に入ると遠見が合図を送る明神山の魚見櫓。これらはいずれも、現在は目にすることができない漁業施設の姿を私たちに教えてくれる貴重な写真といえる。

 このヒヤマの写真もそうした一枚。山の傾斜面に階段状にたつ小網の各家では、屋根などを利用してヒヤマと呼ばれる棚をつくり、イワシやエビを天日乾燥した。瀬戸内式の気候に加え、谷風が一層の乾燥を促すことから、ヒヤマは民家の屋根と屋根との隙間を埋めつくし、特徴的な漁村景観にもなった。それは、かつては国鉄予讃線の車窓から見える日常風景でもあった。しかし、漁獲物の荷揚げから乾燥まで行う共同加工場ができた現在、その独特なヒヤマの風景も姿を消してしまった。