中国四国名所旧跡図31 阿州立江寺 四国札所関所

6月 14日 水曜日

13番の一之宮の後、14番から18番までの札所を廻ったはずだが、西丈は何も描き残していない。寛政12(1800)年の「四国遍礼名所図会」の挿絵が、一つ一つの札所を、実景を目の当たりにするような墨絵で丹念に描いているのと対照的に、絵心がくすぐられた景色だけを描くスタイルを貫いているようにも思える。19番札所立江寺に来て、ようやく西丈は絵筆をとっている。しかし、西丈が描くのは札所ではなく、粗末な橋の上に白い鳥が佇む情景である。

立江寺がある立江に至るには8つの橋があったが、その橋には言い伝えがあったようで、江戸時代からいろいろな書物に記されている。貞享4(1687)年出版の『四国遍路道指南』にも、「石橋八ツ、此はしのうへに白鷺居たときハ往来の人渡る事あしゝ、をしてわたりぬれバあやまち有、標石あり」と既に記されている。西丈はこの話を聞いて、わざわざ橋の上に白鷺がいる絵を描いたのであろうが、橋のたもとには、石碑のようなものが2基あるが、道標であろうか、それともこの言い伝えを記した石碑であろうか。石橋ではなく、木橋にしているのは不可解であり、あるいは西丈は言い伝えを聞いて、そこから想像をふくらませて描いたものなのかもしれない。