野澤錦糸先生がご来館されました!!

2009年7月10日

歌舞伎と文楽の世界―愛媛の伝統芸能―」展の準備も進み、展示室も徐々に資料で埋まってきています。
 そんな中、突然、野澤錦糸(のざわ きんし)先生がご来館されました!
 野澤先生は文楽三味線方として高名な方で、先般、第28回国立劇場文楽優秀賞を受賞されています。
 愛媛県にも頻繁に来県されており、俵津文楽等の三味線を指導するなど、愛媛県の文楽の技術向上に貢献されています。  先日は、俵津文楽へ三味線の指導に行かれる前に、博物館へお寄りいただき、展示準備中ではありますが、展示室をご案内しました。

20090710_589324
大江巳之助の手によるカシラを見る野澤先生
20090710_589325
文楽の衣装、幕、カシラを見られる野澤先生
20090710_589326
俵津文楽の人形の前で記念写真
 ゆっくりと展示をご覧頂く中で、「愛媛県に明治時代の人形のカシラがこれほどたくさん残っているのは驚いた」とおっしゃった野澤先生の言葉が印象的でした。
 今回の展示で紹介しているカシラは一部ですが、これだけの数のカシラが一堂に会する機会はそうありません。
 ますます開幕が待たれる「歌舞伎と文楽の世界―愛媛の伝統芸能―」7月14日(火)からスタートです!

突撃取材!歌舞伎のメイクアップ体験

2009年7月9日

 「歌舞伎と文楽の世界―愛媛の伝統芸能―」展の関連ワークショップとして「体験!歌舞伎メイクアップ」が開催されますが、「歌舞伎のメイクアップってなに?」「どんなことするのかな?」と思われる方も多いのでは・・・

20090708_588925

例えば、この絵の男の人は「鎌倉権五郎(かまくらごんごろう)」と言い、「暫(しばら)く!」といって颯爽(さっそう)と登場するので、歌舞伎のタイトルも「暫(しばらく)」といいます。
 実際にも赤い顔をしていたのではありません。このような赤や黒の筋のことを「隈取(くまどり)」といい、顔の血管や筋肉などを大げさにあらわしたものです。隈取は、色にも意味があり、このような紅の筋は、血の気の多く正義感あふれる若者を表現しています。
 このような隈取をはじめとしたメイクアップ、歌舞伎役者の方はすべて自分の手で行うようです。

 そこで、歌舞伎の世界をちょっとのぞいてみようというわけで、メークアップ体験をれきはくでも行うことになり、ワークショップにむけて準備している様子を突撃取材してきました。
20090708_588929

白粉(おしろい)を塗ります。ワークショップでは、塗ってもらえるから、安心です。真っ白な顔になりましたね。
 
20090708_588930

筆を持って自分で隈取してみよう!ちょっとくらいはみ出たり、左右違ってもノープロブレム♪自分の顔をキャンバスに大胆に変身してみましょう!
20090708_588931

おお!凛々しい出来上がりです。「え?これが私?」と驚くくらいの変身。ポーズを決めて、ハイ記念写真☆

 参加費は500円程度+特別展観覧券が必要ですが、プロの舞台用化粧品を使用して、自分でメイクアップした隈取をハンカチにうつしとった「押隈ハンカチ」のお土産つき♪
 おうちに帰って額に入れてもいいですね。夏の思い出にいかがですか??ご参加お待ちしています。

 「体験!歌舞伎メイクアップ」
 日時:8月9日(日)・8月23日(日)いずれも14:00集合
 参加費:500円程度(特別展観覧券が必要です)
 対象:小・中学生
 事前申し込み不要 先着20名
 カメラを持ってぜひお集まり下さい!
 *かぶれやすい方、お肌の弱い方はご遠慮下さい。
 *できればタオル持参の上、汚れてもよい服装でお越し下さい。

人形に命を吹き込む~俵津文楽~

2009年7月8日

 「歌舞伎と文楽の世界―愛媛の伝統芸能―」展の開幕まであと一週間となりました。展示準備も着々とすすんでいます。
 今日は、西予市明浜町俵津の俵津文楽保存会の皆さん8名が資料を展示して下さいました。
 はじめは首を垂れ、まさに「人形然」としていた人形が、保存会の皆さんの手にかかるとみるみるうちに生き生きとしてくるのは驚きでした。

20090706_588384
人形の髪型を櫛で丁寧にとかし、整髪料でセットします。
20090706_588385
きものの内側に詰め物をしてふっくらとさせます。
20090706_588386
 整えた人形を展示ケースの中に運び入れ、きものや首の角度、足の向きなどの調節をします。
 展示ケースにずらりと並んだ人形は圧巻です。普段は動いていてなかなかじっくりと見ることの出来ない、人形の細部までじっくり見ていただけます。
 こうなると実際の文楽のお芝居も見たくなるもの。今回の展示では、愛媛県内に残る文楽の紹介ビデオも上映する予定です。 
 俵津文楽保存会の皆さん、ありがとうございました!

「歌舞伎と文楽の世界」展がNHKで紹介されます!

2009年7月6日

7月14日開催の「歌舞伎と文楽の世界―愛媛の伝統芸能―」展は、準備もいよいよ佳境に入っております。ちまたでチラシやポスターを見かけることも多くなってきたのではないでしょうか?
 NHK総合テレビで月曜日~金曜日、午後6時10分~午後7時放映の「いよかんワイド」の中で、「歌舞伎と文楽の世界―愛媛の伝統芸能―」展が紹介されることになりました。
 「いよかんワイド」といえば、今年の冬、「昔の道具の謎をとけ!」展も中継していただき、怪人れきはくが衝撃のテレビデビューを飾った思い出深い番組です。
 今回も博物館の展示室から生中継ですので、入念な下準備が必要です。アナウンサーの西山香子さんが博物館にいらして一回目の打ち合わせを行いました。
20090705_588085

とはいえ、展示は14日から。まだ準備中の展示室にご案内して、資料について展示構成について担当学芸員がお話しました。
20090705_588086

「歌舞伎と文楽の世界―愛媛の伝統芸能―」展の生中継放映日は7 月16日(木)です。
「怪人れきはく」に替わる超大型新人が「しばらく!」とばかりにテレビデビューするかも?!しれません。
愛媛の皆様どうぞお見逃しなく!

直木賞作家、歴博に来る!!

2009年7月5日

 「歌舞伎と文楽の世界―愛媛の伝統芸能―」展まであと10日!
 今回の展示では、記念講演会も充実しています。
 直木賞作家の松井今朝子先生が、「歌舞伎と遊ぶ」というテーマで愛媛県歴史文化博物館に来館し、お話しくださいます。
 松井先生は、早稲田大学大学院文学研究科演劇学修士課程を修了後、松竹株式会社に入社し、フリーとなった後も、長年にわたり、歌舞伎の脚色・演出・評論に携わってこられました。
 その後小説家としてデビューし、2007年に『吉原手引草』で第137回直木賞を受賞されています。
 『仲蔵狂乱』や『東洲しゃらくさし』『二枚目』『似せ者』など多数の著書がありますが、愛媛新聞で連載されていた『そろそろ旅に』を一番に思い浮かべる方も多いかもしれませんね。道草ばかりの十返舎一九に、次の日の新聞を待ちかねた方もいらっしゃるのでは・・・
 小説の他にもブログ本も好評で、テレビの料理番組を見て作った夕食や趣味の乗馬、愛する亀、舞台評論から政治ネタまで盛りだくさんのブログも見ごたえがあり、松井先生の日常やお人柄を垣間見ることができます。
今朝子の晩ごはん→http://kesako.jp/
 松井先生が愛媛に、しかも南予に来られてお話しされる、めったにない必聴必見の講演会です!「歌舞伎と文楽の世界」展と合わせて、ぜひ博物館へおいで下さい。

20090705_588087

記念講演会「歌舞伎と遊ぶ」
講師:松井今朝子(直木賞作家)
日時:8月8日(土)11:00~12:00
会場:愛媛県歴史文化博物館 多目的ホール
参加費:特別展観覧券が必要です。
申し込み方法
 「松井今朝子先生講演会」と明記の上、住所・お名前・年齢・電話  番号とご記入の上、往復ハガキでお申し込み下さい。(一通につき4名までお申し込みできます。その場合は代表者を明記してください)〒797-8511  西予市宇和町卯之町4-11-2  愛媛県歴史文化博物館

蚊帳はじめました。

2009年6月30日

 やっと梅雨らしいお天気になりました。
 とはいえ、梅雨とは名ばかりの暑い日が続いていました。窓を開けて網戸で涼しい風を入れてお休みになった方も多かったのではないでしょうか。
 そんな中博物館でも夏仕様に模様替えということで、民俗展示室2の「海のいえ」に蚊帳を吊りました。蚊が入ってくるのを防ぐネットのことを「蚊帳」といいます。
 夏の夜、部屋の中に蚊帳を吊るすと、蚊にわずらわされず、ぐっすり眠ることができました。
 時には捕まえた蛍を蚊帳の中に放して、その光を楽しむこともあったそうです。
 気をつけることは蚊帳を大きく開けて出入りしないこと!!そーっと入らないと、蚊も一緒に蚊帳に入ってしまうからです。

20090630_586773

 蚊帳の中に人がいるのがおわかりでしょうか。ぼんやりとしか見えませんね。
 「蚊帳の外」にいると、中の様子がはっきりとわからないことから、「内情がよくわからない」「仲間はずれ」という意味で「蚊帳の外」という表現を今でも使います。

歌舞伎DEクイズ 解答編

2009年6月11日

先日のブログでのクイズ、いかがでしたか?
 問題となったど派手なきものを、もう少し近くで見てみましょう。

 

 このような裾にスリットが入った歌舞伎衣装を「四天(よてん)」と言います。裾についた房飾りは「馬簾(ばれん)」といい、主役級の役柄の人が着ます。お相撲さんの化粧まわしに少し似ていますね。
 真中で大きく見得をきるのは錘馗(しょうき)様でしょうか。袖の部分に赤鬼の姿も見えます。今にも動き出しそうな姿は、デザインに加えて、立体的な刺繍の効果もあるでしょう。
 生地は分厚く、重みがありますが、布団にするには裾が足りませんね。
 このように裾が短く、またスリットが入っているのは、役者さんが動きやすいようにするためです。
 というわけで正解は、「(2)の大泥棒のきもの」です。
 この四天は「日本駄衛門」という大泥棒や戦国武将の「加藤清正」など荒々しい役柄が身につけたそうです。
 歌舞伎の衣装は、見ているだけでも圧倒的な迫力と美しさがありますが、お話との関係や意味を知ると「へえ」と思うことがたくさんあります。
 今回の「歌舞伎と文楽の世界―愛媛の伝統芸能―」展では歌舞伎や文楽がいかに楽しく、奥深い文化であるかを紹介したいと思っております。

 夏休みも是非れきはくへいらしてください!

歌舞伎DEクイズ 問題編

2009年6月10日

 現在開催中の「えひめ発掘物語Ⅱ&絵で見る考古学」展は残念ながら今週末で閉幕となります。「え!まだ見に行ってないよ」という方はお早めに見にいらしてください!

 
 一方で、7月14日から始まります「歌舞伎と文楽の世界―愛媛の伝統芸能―」展も、着々と準備が進んでおります。
 本日は、川瀬歌舞伎(久万高原町)からお借りしてきた資料の撮影を行いました。

 さて、ここでクイズです。
 問題 このど派手なきものは一体なんでしょうか?

答え(1) お相撲さんのきもの
答え(2) 大泥棒のきもの
答え(3) きものと見せかけて実は布団

 いずれにしても、今ではあまり見ることない形と模様ですね。それもそのはず、普段に使うものではなく、「歌舞伎」という非日常のお芝居の中で使われたものです。

 ヒント:どんな役柄の人が使ったか、想像してみてください。
それでは答えは明日のブログで。

中国四国名所旧跡図15 弥谷寺

2009年6月6日

中国四国名所旧跡図(弥谷寺)

 標高382メートルの弥谷山の中腹にあった71番弥谷寺を描いている。古川古松軒の「四国道之記」には、弥谷寺の岩にことごとく仏像が彫刻されているが、それは弘法大師が一夜で千体の仏像をおつくりになったと伝えられていると記されている。西丈の絵にも、岩に彫られた数々の石仏の姿を見出すことができる。

 西丈と同様に江戸時代後期の弥谷寺を描いたものとしては、阿波の遍路による「四国八十八ケ所名所図絵」の挿絵がある。その挿絵では、上空から鳥瞰して弥谷寺の建物配置なども忠実に捉えているのに対して、西丈は写実性を後退させつつも、岩肌を強調して当時の旅日記に「見る所皆々仏像にあらずといふことはなし」と記した特徴的空間を力強く描き出している。

 また、西丈の絵には、「狼も念仏も同し法の声ちりのうきよといとふいやたに」の言葉が添えられている。西丈は遍路の途次に狼の声を聞いたのかもしれないが、江戸時代後期、四国の山には狼が広く棲息していたようである。文化6(1809)年、京都の商人が四国遍路した際の旅日記にも、人々が寝静まった夜、狼や猿の声が山に響き渡るのに恐怖を感じると記されている。

  弥谷寺についても、最後に『金毘羅名所図絵』の挿絵も添えておく。

金毘羅名所(弥谷寺)

中国四国名所旧跡図14 出釈迦寺

2009年6月5日

  丸亀に着いた西丈が、実際にどのように四国遍路をまわったのか分からないが、絵の順番でいくと、丸亀から少し後戻った73番の出釈迦寺が丸亀の次に綴られている。ちなみに、丸亀に着船した遍路は、78番の道場寺から札を打ち始めるのが一般的である。
20090605_579905

 西丈の絵では、右下に出釈迦寺の境内が描かれている。境内は石垣の上にあり、中央の大きな建物が本堂(あるいは鎮守社とも)で、その脇の小さい建物が大師堂と思われる。境内にはさらに、手形のようなものが付いた石と石碑のようなものが見える。手形の石には、「露のせとしらは命捨て見よ尺迦の手形か反古にやなるまい」の文字が添えられている。境内にはかつて手形石のようなものがあったのだろうか。
 ところで、出釈迦寺には、次のような弘法大師伝説が残っている。大師7歳の時に、寺の裏山に登り、「衆生済度(迷いの苦しみから衆生を救って、悟りの世界に渡し導くこと)」、と言って、山の崖から谷底に飛び降りた。その時に紫雲が湧き天女が舞い降りて大師を抱き留めた。弘法大師は不思議な仏の力に喜び、霊験を後の世に伝えようと、自ら釈迦如来を刻み、その山の麓に堂宇を建立し、出釈迦寺とした。また、身を投げた断崖は、「捨身ケ嶽(しゃしんがたけ)」といわれるようになった。西丈はこの伝説を意識して、出釈迦寺と一緒に画面左に「捨身ケ嶽」が描き込んでいる。その上で伝説にちなみ、次のような言葉を書き付けている。
  難行も苦行も釈迦のおしへなりすつる命をとめるのも釈迦
  残る暑や尺迦も抛出釈迦寺
 最後に『金毘羅名所図絵』の挿絵も添えておく。西丈に比べると、出釈迦寺の境内の様子や眺望が写実的に描かれていることが分かる。

20090605_579904