特別展「昭和子ども図鑑」でお借りしている山星屋コレクションの中から、おもしろいお菓子史料のいくつかを紹介します。
前回紹介した「オモシロイハコ」の正体は、みなさんもお気づきのとおり、自動販売機ということなります。「夕刊報知新聞」でノンキナトウサンの連載が始まった翌年の大正13(1924)年に、はやくも中山小一郎が発明した袋入り菓子の自動販売機のキャラクターとして採用され、全国の菓子店の店頭などに1000台程度が設置されたことがわかっています。広い範囲で普及した最初の自動販売機といえます。
正面から見て右側面の扉を開けてみると、内部の構造がよく分かります。1銭銅貨を入れると、ゼンマイ仕掛けで写真に見えるドラムが回転して、お菓子が出てきました。
よく見ると、確かにゼンマイネジをなくさないように紐で結んでいます。ネジをまいた状態にしてコインと投入させたのでしょう。
また、内部の左上を見上げてみるとベルが見えます。おそらくはベルの上に突き出た鉦(かね)でたたく「チンチン」という音とともにお菓子が落ちてきたものと思われます。取り出し口に落ちてくるのは、多くの文献では袋入りの菓子だったと記されています。しかし、前回紹介したように山星屋の史料には「お菓子/玩具/キャラメル」とあるのが気になります。ドラムの一つ一つの小さな空間に、袋入り菓子、玩具、キャラメルをアトランダムに入れたとしたら、何が出てくるのか分からなくなります。あるいは何が出てくるのか分からないという楽しみがこの自動販売機には加味されているのかもしれません。
ところで、この普及型の自動販売機、古いにもかかわらず、1000台も普及したということもあってか、数台は遺っているようです。兵庫県立歴史博物館の入江コレクションとなんでも鑑定団で知られる北原照久氏のコレクションにあるノンキナトウサンの自動販売機はほぼ同じ形状で、手に帳面をもった姿として描かれています。そして、お金の投入口がある面には、「自動販賣器」、「リンノナル内ハ/入レテモ出マセン/一銭入レルト/御菓子ガ出マス」と記されています。しかし、山星屋コレクションのものは、同じノンキナトウサンの自動販売機とはいえ、入江コレクション、北原コレクションと形状が異なっています。
インターネットで探っていると、もう1台、ノンキナトウサンの自動販売機が見つかりました。その形状は一見、入江・北原コレクションのものと似ていますが、右手は帳面ではなく、鈴をもっているなどの違いもあります。そして、この史料にはありがたいことに銘板の画像がついていました。それを読むと、「實用新案登録願第二四三七號/自働販賣看板/製作ト販賣ハ/東京 滝野川田端一七一/□□看板店」とあります。このノンキナトウサンの自動販売機は東京で製作されたことがわかります。
山星屋コレクションのものも銘板が付いていますが、残念ながらかすれていて部分的にしか読み取ることができません。読める部分だけ示すと、「廣告塔自動菓子販賣機」とかすかに読めますが、製作者の名前はほとんど読むことができません。ただし、二つの銘板からは、ノンキナトウサンの自動販売機が「看板」や「広告塔」としての役割ももっていたことがわかります。また、中山小一郎が発明した袋入り菓子の自動販売機は、もしかしたらいくつかのメーカーでつくられていたのかもしれません。遺されているノンキナトウサンの形状やデザインが違うのは、そのことを裏付けているようにも思えます。
参考文献
北原照久『20世紀我楽多図鑑』(株式会社PARCO、1998年)
『新世紀こども大博覧会』(兵庫県立歴史博物館、2003年)



