調査・研究えひめの歴史文化モノ語り

第25回
2018.7.3

県内最大の前方後円墳

相の谷1号墳

1966年の発掘調査時に撮影された相の谷1号墳。全長約80mは県内最大規模だ(撮影・正岡睦夫氏)
相の谷1号墳から出土した「獣紋鏡」のエックス線写真。首の長い獣の紋様が分かる=古墳時代前期後半、鏡は県歴史文化博物館保管
 来年(2019年)、開通20年を迎える「瀬戸内しまなみ海道」の四国側の玄関口、来島海峡大橋の近くに、相の谷(あいのたに)1号墳(今治市湊町2丁目)がある。この古墳は今から約50年前の1965年に宅地造成中に発見され、翌年の発掘調査によって、全長約80mで県内最大規模の前方後円墳であることが確認されるとともに、2段に形成された墳丘には葺石(ふきいし)や埴輪(はにわ)が伴い、埋葬施設として長さ7.1mの長大な竪穴式石槨(せっかく)を有することなどが明らかになった。
 調査後、出土遺物は長らく日の目を見なかったが、2003年から当館で再整理を行った結果、多くの新発見があった。まず、副葬品の2面の銅鏡は、クリーニングやX線写真撮影を行った結果、銘文や紋様が明確になった。1面は鳥と獣をモチーフにした禽獣画象鏡(きんじゅうがぞうきょう)と呼ばれる中国後漢時代の鏡である。もう1面は、獣紋鏡(じゅうもんきょう)という倭国(わこく=日本)産の鏡だ。
 調査時に大量に発見された埴輪の破片は、約4千点を数え、これまで知られていた円筒埴輪・壺(つぼ)形埴輪の他に朝顔形埴輪が確認された。また、壺形埴輪は「東四国系壺形埴輪」という阿波・讃岐地域の製作技法に類似する資料が確認でき、埴輪の製作に近隣地域の集団が関連したことが想定できる。
 近年地元の「しまなみ海道周辺を守り育てる会」によって環境整備や看板が設置され、周辺に残存する2号墳などとともに県内最大の前方後円墳を体感することができるようになっている。
 今後、古墳をどのように保存するか、また、これらの出土遺物をどう活用するかが模索されている。

(専門学芸員 冨田 尚夫)

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