調査・研究えひめの歴史文化モノ語り

第77回
2020.9.12

四国最古級出土量多く

伊予市高見Ⅰ遺跡の旧石器

出土した後期旧石器時代の多様な石器群(県教育委員会蔵)=写真は(公財)県埋蔵文化財センター提供
 (2020年)3月21日に開通した松山自動車道中山スマートインターチェンジ(IC)の建設に際し、2017年1月~6月に埋蔵文化財の発掘調査が行われ、四国で最古級に位置づけられ、県内でも最大規模である後期旧石器時代(2.8万~1.8万年前)の遺構・遺物が多数確認された。今回はこの高見Ⅰ遺跡2次調査で出土した約2万~3万年前の旧石器人が使った道具、旧石器について紹介したい。
 私がこの遺跡に関わったのは、遺跡の発掘調査前の15年にさかのぼる。当時在籍していた部署では、土木工事を伴う公共事業予定地で遺跡(埋蔵文化財包蔵地)の有無を確認調査(試掘調査)し、ある場合には、発掘調査の範囲を決める業務を担当していた。
 IC工事予定地は、松山道の建設にあたって1995~96年に近接地で発掘調査が行われ、後期旧石器時代から縄文時代にかけての遺構・遺物が確認されており、遺跡が所在することは確実視されていた。試掘調査では、前回調査でも確認されていた同じ土層が認められ、肱川流域で産出する赤色珪質岩(せきしょくけいしつがん)と呼ばれる石材の破片が出土した。
 このような経緯を経て実施された発掘調査では、興味深い事実が多数確認されたが、一番驚いたのは遺物の出土量で、本遺跡では、約5千点の遺物が出土した。うち後期旧石器時代に属する遺物は約3,900点を数え、それまでに県内で確認されていた同時代の遺物をはるかに上回った。またその石材は約25km離れた肱川流域の神南山(かんなんざん)で産出する赤色珪質岩が主体を占めていることが注目される。
 主な石器は、ナイフ形石器、台形様(だいけいよう)石器、彫器(ちょうき)、掻器(そうき)、礫石器(れきせっき)などで、非常に多様である。ナイフ形石器は小型のものが多い。また韓国や九州で多く出土している剥片尖頭器(はくへんせんとうき)という槍先(やりさき)が1点出土し、他地域との交流があったことがうかがえる。
 館では、同2次調査の資料を中心に紹介するテーマ展「伊予市高見Ⅰ遺跡とその時代 ―四国最古級の旧石器時代遺跡―」(2020年9月12日~10月25日)を開く。四国にいち早く暮らした先人の足跡を感じていただければ幸いである。

(専門学芸員 冨田 尚夫)

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