調査・研究えひめの歴史文化モノ語り

第130回
2022.11.29

景品にも世相 興味深く

お年玉付き年賀はがき

赤(2円+1円=寄付金)と青(2円)のお年玉付き年賀はがき。1949年発行
「松くい鶴」の料額印面(左)とくじの番号(右)
 今月1日から2023年用年賀はがきが発売された。今年(2023年)の発行枚数は約16億4千万枚。メールや交流サイト(SNS)の普及で減少傾向が続くが、一筆添えるだけで心がこもる手紙の文化も忘れたくない。年賀はがきの楽しみといえばお年玉。今回は日本初のお年玉付き年賀はがきを紹介する。
 お年玉付き年賀はがきが発行されたのは、1949年12月1日。1950年用の年賀はがきからである。2円の青色と1円の寄付金が付いた3円の赤色の2種類があった。絵柄はともに鶴が松をくちばしに挟んだ「松くい鶴」。
 「年賀状の歴史と話題」(郵政研究所附属資料館、1996年)によると、お年玉付き年賀はがきの発想者は、大阪の心斎橋で用品雑貨の会社を経営していた林正治氏。1987年の「サンデー毎日」で当時を回想した一文が紹介されている。「終戦後、うちひしがれた状態のなかで、通信が途絶えていました。年賀状が復活すればお互いの消息がわかるのにと思ったのが最初の発想です。それにクジのお年玉をつけ、さらに寄付金を加えれば夢もあり、社会福祉のためにもなると考えた」そうだ。
 当時の景品は、特等がミシン、1等が純毛洋服地、2等が学童用グローブ、3等が学童用こうもり傘、4等がはがき入れ、5等が便箋と封筒のセット、6等が切手シート。家庭で洋裁が盛んになったことやベビーブームを反映したものと思われる。
 その後の最高景品の推移を列記すると、電気洗濯機(1956年)、タンス(1958年)、ステレオ(1961年)、35ミリカメラ(1962年)、8ミリ撮影機(1963年)、ポータブルテレビ(1965年)、トランジスターテレビ(1968年)、カセットテープレコーダー(1972年)、折りたたみ自転車(1975年)、コンパクトカメラ(1980年)、カラーテレビ(1983年)、電子レンジ(1984年)となる。
 来年の1等は3種類。現金30万円、電子マネーのギフト31万円分、2022年発行特殊切手集と現金20万円のいずれかとのこと。“モノ”より“カネ”の時代なのだろうか。景品にも世相が表れていて興味深い。

(専門学芸員 平井 誠)

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