特別展江戸考古紹介(33) 武士の園芸趣味

2008年12月4日

県民館跡地出土植木鉢
県民館跡地出土染付植木鉢(愛媛県教育委員会蔵)

 江戸時代後期には、武士や町人の間で、松、菊、梅、朝顔などの植木や盆栽がさかんに行われていました。当初は、甕や壺の底部などに穴を開けて、植木鉢として使用していましたが、次第に底部に穴の開けられた、専用の植木鉢が作られるようになりました。
 宇和島藩江戸屋敷では、高級な色絵の香炉に穴を開けて植木鉢に転用したものも見つかっています。松山城の堀之内の武家屋敷から、瓦質や土師質土器のほかに、陶器や山水文などが描かれた磁器製の植木鉢も見つかっています。松山藩士たちの武家屋敷でもさまざまな植物が育てられていたことでしょう。

特別展江戸考古紹介(32) 武士も飼っていた金魚

2008年12月3日

県民館跡地出土土師質土器鉢
県民館跡地出土土師質土器鉢(愛媛県教育委員会蔵)

 松山城三之丸の武家屋敷から見つかった、金魚などを飼育していたと考えられる鉢です。江戸時代には、今と違ってガラスの金魚鉢などは大変高価でしたので、多くは口縁部の大きな鉢などで金魚を飼育していました。金魚も上から鑑賞できる品種が改良され、大変もてはやされたことが浮世絵からもうかがえます。
 堀之内に住んでいた松山藩士も、このような鉢のなかで金魚を愛でていたことを想像すると、とても親しみがわいてきます。

特別展江戸考古紹介(31) 武士も飼っていたペット

2008年12月2日

県民館跡地出土餌猪口
県民館跡地出土餌猪口と擂鉢(愛媛県教育委員会蔵)

 松山城三之丸の武家屋敷から見つかった、小さなやきものです。鳥などを飼育する際に使用したと考えられる、えさ入れとえさをつくるための小さな擂鉢です。近郊の窯である西岡焼でもえさ入れが見つかっていることから、需要があったことがわかります。
 江戸時代には、小鳥を飼育するのがはやっていたとされています。これらの遺物から堀之内に住んでいた松山藩士たちも、小鳥などを飼って、鳴き声を楽しんだり、姿かたちを愛でていたことを想像されます。

特別展江戸考古紹介(30) 武士が使った煙管

2008年12月1日

県民館跡地出土煙管
県民館跡地出土煙管(愛媛県教育委員会蔵)

 松山城三之丸の武家屋敷からは、煙草を吸うための道具である、銅製の煙管がたくさん見つかっています。吸口と雁首は金属製のため残存していますが、その間は、竹などで作られていたため腐って、現在は失われています。
 浮世絵にも長い煙管をもった遊女が多く描かれていることから、江戸時代にはタバコが好まれたことがうかがえます。

特別展江戸考古紹介(29) 江戸時代の髪飾り

2008年11月30日

県民館跡地出土笄
県民館跡地出土ガラス笄他(愛媛県教育委員会蔵)

 松山城三之丸の武家屋敷から出土した細い棒状の製品は、ガラスでできた笄です。おもに髪をまとめるのに使用されました。黄色や青、緑、白いガラスが見られます。ねじった形のものもあります。黄色のガラスには、葉の文様が彫刻されています。これらは鉛ガラスのため、風化して表面に粉を吹いているものもあります。
 遺跡出土の笄は現在は折れて短くなっていますが、当時は女性の髪を美しく飾っていたと想像されます。

特別展江戸考古紹介(28) 江戸時代の化粧道具

2008年11月29日

県民館跡地出土化粧道具
県民館跡地出土化粧道具(愛媛県教育委員会蔵)

 松山城三之丸の武家屋敷から、たくさんの化粧道具が見つかっています。武家屋敷には、男性だけでなく女性もたくさん住んでいたことがうかがえます。
 後列の左の大きな染付の碗は、鉄漿の際に、口をゆすぐのに使用されたと考えられる、うがい茶碗です。見込みにはなすびの文様が描かれています。後列の色絵の段重には、白粉が入れられていたと考えられます。女性好みの色絵の製品です。手前の伏せている小碗は紅猪口と呼ばれる、中に紅が塗られ、筆などで口紅を塗るための道具です。使用しないときは伏せて置かれていました。紅は大変高価なもので、小さな容器がたくさん見つかっています。

特別展江戸考古紹介(27) 武士が使った文房具

2008年11月28日

県民館跡地出土石硯
県民館跡地出土石硯(愛媛県教育委員会蔵)

 現在、私たちは筆記用具といえば、鉛筆、ボールペンなどを使っていますが、それも今はパソコンになりかわりつつあります。江戸時代にはそんな便利な道具はありませんでした。硯に墨を入れて墨を磨って筆で文字を書いていました。松山城三之丸の武家屋敷からは、さまざまな大きさの石の硯が見つかっています。
 石の硯でありながら、色もさまざま見られます。左から2番目の赤い硯は、現在の山口県でつくられた赤間硯です。後ろに「赤間硯」と刻字されているものもあります。遺跡からはたくさん見つかっていますので、大変好まれていたのでしょう。

特別展江戸考古紹介(26) 武士が使った明りの道具

2008年11月27日

県民館跡地出土灯明具
県民館跡地出土灯明具(愛媛県教育委員会蔵)

 江戸時代には、今のように明るい電灯はないため、夜は真っ暗でした。そこで必需品だったのが灯明具です。蝋燭は高価でしたので、使用することは稀でした。おもに菜種油などに灯心をつけて明りを灯すための灯明皿が松山城三之丸の武家屋敷からたくさん見つかっています。土器などの素焼きの皿が用いられましたが、表面に釉薬を掛けて油をもれないようにした陶器の灯明皿も作られるようになりました。油徳利には、注口から漏れた油を再度回収できるように肩部に突帯をつけた工夫がなされています。
 灯明具は需要が高く、砥部焼や西岡焼の窯でもさまざまな灯明具がつくられていたことが窯跡資料からわかってきています。

 11月29日(土)には、大本敬久学芸員による特別展関連講座「灯りと暮らしー火の歴史と民俗」を開催しますので、ぜひご参加ください。

特別展江戸考古紹介(25) 武士が食べた貝

2008年11月26日

県民館出土貝
県民館跡地出土貝(愛媛県教育委員会蔵)

 遺跡からは、ゴミとして捨てられた貝殻や骨がたくさん見つかります。これらはゴミですが、丹念に調べることにより、江戸時代に住んでいた人々がどんな食生活を送っていたかを知ることができる、お宝なのです。
 松山藩の武家屋敷からは、大きなアワビ、サザエ、イワガキ、鯛、スズキなど、瀬戸内海沿岸で採れた魚介類が見つかっています。新鮮な魚介類を食していた姿がうかがえます。

回想法と博物館

 「回想法」という言葉をご存知ですか?
 過去のことを思い出したり、自分の体験を話すことにより、脳を活性化させるもので、介護予防のプログラムとして期待されています。
 今回、宇和島市社会福祉協議会が主催された傾聴ボランティア講座、「回想で元気づくり講座」におじゃまして、博物館の資料を使った回想法のデモンストレーションを行いました。
 道具を使ったことのある方、使ったことはないけど見たことはある方、見たことも聞いたこともない方、メンバーには色々いらっしゃいますが、お互いに説明したり、教えてもらったりしながら話は弾みます。
 例えば湯たんぽなど、お湯を入れて温める人、ブリキの湯たんぽ自体を火にかけて温めた人、使い方は一つではないので、話が広がります。


 豆炭あんかです。見た瞬間「懐かしい」と声があがりました。

 20分ほどのデモンストレーションが終了後、話の内容やすすめるにあたっての態度など回想法の注意点について、心理士である講師の先生からアドバイスを頂きました。
 さて次は、参加者の皆さんの実践です。月組、星組、花組と華麗な名前のついたグループに分かれて、博物館の資料である昔の道具を使いながら、懐かしいお話を始めます。6~8人の少人数の中で、リーダー、補佐を決めたのですが、誰がリーダーだったかわからないくらい話が盛り上がる組ばかりです。
 アルミのお弁当箱を選んだ組では、「冬はストーブでお弁当を温めたわ」「ふたにお茶を入れて飲むのよ」「お弁当のおかずはイカの佃煮が懐かしい」など、お弁当の中身から使い方まで、どんどん思い出話があふれてきました。
 自分の思い出話をするだけでも楽しいものですが、他の人の話を聞いて、また思い出してお話して・・・という会話のキャッチボールが回想法では大切になります。
 その回想法の中で、実物資料である昔の道具が果たす役割は小さくありません。

 愛媛県歴史文化博物館の常設展示では、昭和初期の大街道を復元した町並みを歩いたり、牛鬼や太鼓台など愛媛の祭りを見たり、実物大の農家におじゃまして昔のくらしをのぞいていただくことができます。懐かしい風景や、昔の道具を見ながら、楽しい思い出を語り合うことで、脳をイキイキ、笑顔で楽しい時間をすごしていただけます。
 さらに遠方でなかなか博物館にご来館いただけない方のために、貸出用資料パックを現在準備中です。来春登場予定のその名も「れきハコ」には、回想法のお手伝いをする「昔のくらしパック」のほかに、「弥生のくらしパック」や、「祭りパック」、「民話パック」などがございます。
 今回の講座では「れきハコ」を実際に試していただき、博物館としてもよい機会となりました。この講座での経験を踏まえてよりよい「れきハコ」にすべく改良を重ねていきたいと思っております。
 脳をイキイキ、元気で楽しく毎日を過ごすために、ぜひ博物館をご利用下さい。お待ちしております。